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明けまして~、って今頃かな?
いきなりですが、ナギ×ナギの本年の決意。
『今年中に24本の作品を応募します!!』
まずはその第一作として、狙うは第六回電撃編掌王! お題は《学校・二人・春》で二千字以内。
夜の学校は、思ったより簡単にはいることができた。私の通う高校は町を見渡せる山の中腹に建っているから、きっとここは町で一番空に近い場所だ。
「アキ、今から夜桜を見に行こうぜ」
そんなことをシュウが言い出したのは、塾が終わった次の瞬間のことだった。
それはなんの前フリもない突然な話だったけれど、私が驚くことはなかった。シュウの提案が突然なのは昔からだ。私とシュウは幼稚園の時からの一番の遊び相手で、シュウは何か新しい遊びを思いついては私を町中ひっぱり回していた。十年経った今でも、その性格は全然変わっていない。そんなところを私は嫌いではないけれど、もう高校生だというのに、全然進歩がないというのはどうかと思うかな、シュウくんよ。などとそんなことを考えながら学校へ続く坂道を登り、当然のごとく閉まっていた校門を乗り越えたのが十分ほど前のことだ。
正直に言うと、私はあまり期待してはいなかった。確かに今は花見シーズンだが、そんな良い場所はもうあらかた押さえられているだろう、と。
しかし私の浅い予想は、思わぬ形で裏切られることになる。
「うあ」
そんなどこの国の言葉かも判らないような呟きを、私は無意識のうちにもらしていた。
「きれい」
やっと言えたのがそれだけで、後はもう何の言葉も続かない。
言葉を失うほどの感動というものに、私は生れて初めて出会った。
それほどまでに、その風景は美しかった。
グラウンドの端、野球部のフェンスの向こう側は急斜面になっていて、そこには一本だけ桜の木が生えていた。それも文句の付けようのないほど満開の。風が吹くたびにその花びらは舞うようにそこから散っていく。そして、その向こうに見える風景が何よりすごかった。
「こんな景色があったなんて」
急斜面の向こうは空。眼下には私達の住む町があり、空に出ている丸い月が、町の向こうに広がる海原を淡く照らしている。世界が違って見える、というのはこういうことを言うのだろう。桜と海と月、どれもありふれたものだと思っていたのに、それが集まってこんなに美しいものになるだなんて、私は考えたこともなかった。
風が幾枚もの花びらを勢いよく空へと舞い上げ、夜の空へと運んでいった。その光景はやはり息を飲むくらい美しかった。
「あっ」
空ばかり見ていたからだろう。軽い風に体があおられ、不意に傾いた。ここはフェンスの外側で、これより先につかまるものはない。重力と加速を感じる。え、もしかしてやばい?
「おい」
落下は危ういところで止まった。
隣に立っていたショウが支えてくれたのだ。私の左手を、ショウの右手がつかんでいる。
「気をつけろよ」
「ん。ありがと」
私がお礼を言うと、ショウは少しだけ私の顔を見て、また夜空へとその視線を向ける。忘れているのかその手はつないだままだ。
「けっこう綺麗だろ。ここからの眺め」
「うん。最高」
「ここ、野球部でボール拾いしてて見つけたんだ」
そうか、と私は納得する。確かにそんな立場でもないと、この場所は見つけられないだろう。だとしたらそれはとても素敵な偶然だ。
ちらりと横目でシュウの様子を伺う。
空を見上げている、月明かりに照らされたシュウの横顔は、なぜかいつもよりちょっと大人っぽく感じられた。
「俺もすぐにこの場所のこと気に入ってさ……その、えとよ」
しばらくそうして気まずそうにしていたが、やがて何かを決心したように話始めた。
「考えて……言うならここで、って決めてたんだ」
「え?」
シュウがいきなり私に顔を向けた。こっそりのぞいていた私は驚きで反応ができず、二人の目があった。私を見ているシュウの目は真剣で、握られている左手もやけに熱く感じられる。
「アキっ」
シュウは最初に私の名を呼び、
そして大きく息を吸い込んでから、言った。
「俺、お前のことが……好きだ」
大事なセリフも、最後の方は尻すぼみで、その声は桜の木のざわめきに負けてしまいそうだったけれど、それでもその必死な気持ちはちゃんと伝わっていた。
シュウの顔は、夜闇の中でも判るくらいに真っ赤になっている。桜と海と月、そして隣に立つ幼馴染の男の子。私の目には、そのどれもが同じくらいに綺麗に見えた。ありふれていると思っていたものが、違って見えた。
「あは」
驚くでもなく喜ぶでもなく、私は笑っていた。
シュウは私の反応に逆に驚かされているみたいだ。
そんなシュウの腕に、私はガバッと抱きついてやる。
暖かい手。抱きつかれた方は真赤になって固まっている。
その反応に、私はまたおかしい気分になった。
なんだ。こいつも変わったんだな、って。
さて、私がどう答えたらシュウはもっと面白い反応を見せるだろうか。
幸せの後から好奇心がこみ上げてくる。
私もしかたのないやつだな、とは思いながらもそんなことを考えている。
だって私は思ってしまったのだ。
この世界みたいに、シュウが持っている違った面をもっとたくさん見てみたいな、って。
一年に24作品も応募だなんて……やばいっすね。やばいっすよー。
作品を読ませてもらいました。いい感じです。雰囲気がちょーいい感じです。
タイトルはいいの思いつきません。『アキの物語』なんてどうでしょうか……よくないですね、はい。無視してください。