作品をもっとよきものにするために、常に批評酷評アドバイスを求めております。作品の著作権は夢細工職人-ナギ×ナギにあります。
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『夏と花火と中田さん』の改良作です。
改良というよりほぼ全とっかえですが。
春に書いた作品となんだか感じの似た作品になったので名前もそんな感じにしました。
ちなみに僕の高校の屋上はバリケードみたいに積まれた荷物で完璧に封鎖されていました。まぁ、幽霊が出るなんて噂もなかったのですが。でもたぶん高校時代の僕は屋上で幽霊と会ったりしたかったんだと思います。
そんな気持ちで書いた、作品です。
学校の屋上に設置された貯水タンクの上。そこから見下ろした夜の町は、今日が夏祭りということもあって、神社を中心にどこもかしこも賑やかだった。
中田さんは、大勢の人で賑わうお祭りを楽しそうに眺めている。
その笑顔が本当はここにはないものでも、僕は彼女の隣で喜びを感じていた。
中田さんはちょうど一年前、夏祭りの夜に学校の屋上から落ちて死んだ女子高生で、その時僕とは同じクラスだった。なぜ彼女が死んだのか、そもそも自殺だったのか事故だったのかすら分からないが、今年の夏に入ってから屋上に幽霊が出ると噂が立ち始め、好奇心から確かめに行き、幽霊になっていた彼女を見た時、僕はとにかく「すげー!」って思った。
だってそうだろう?
幽霊だぞ。幽霊。そんな非科学的で幻想的なものがマジでいるなんて普通思わない。それなのに彼女はいた。深夜の校舎の屋上にプカプカゆらゆら浮かんでいたのだ。その事実に僕は興奮した。どこまで行っても、たぶん死んでもずっと普通のままだろう僕は、中田さんという異世界に本気で感動した。だって幽霊は家庭の不和に苦しむことも、学校での問題に悩むことも、将来の不安に怯えること何一つなく、ただ自分の目的のためにだけそこにいることが出来る。そんな在り方に感動しないで、何に心を動かせというのだ。
だから僕は毎日のように深夜の学校へ侵入を繰り返した。
見つかっても逃げ切り、どんな対抗策を取られようが必死で中田さんに会いに行った。会って何をするわけでもなかったけど、僕は幽霊である中田さんと一緒にいるだけでひたすら嬉しかったのだ。
だからそんな彼女の笑顔が、無性に喜ばしく感じられていた。
「もう、祭りも終わりだね」
中田さんは静かに言う。
それは何かを懐かしんでいるような声だった。
どことなくいつもより深い彼女の横顔に、僕はなぜか不安になった。
「君、私のこと好きでしょ?」
見事な不意打ちに、取り繕おうにも、すぐには言葉が出てこなかった。
違うと否定しようとして、そんな自分をもっと深い自分が押し留めて、嬉しさや恥ずかさといったいろんな感情が混ざり合い、結局一つとして口から出ることはなく、沈黙だけが生産された。
それを肯定と受け取ったか、中田さんはおかしそうに笑う。
「分かるよ。だって雨の日も風の日もやってくるんだから」
そんなことを言う中田さんの笑顔は、事実すごく可愛いかった。
「でもごめんね。私、他に好きな人がいるから」
どう反応すればいいのか、分からなかった。
中田さんは笑顔のままに続ける。
「とにかく私は君の気持ちには答えてあげられない。もともと幽霊だしね。だから今日は最後の時間を付き合ってくれた、そのお礼」
「お礼?」
なんのことかと訊き返そうとする僕の口を、中田さんの指が制した。
唇に向けられた人差し指。
その指がまっすぐ天へと向けられる。
そして、そこから大きな大きな花が咲いた。
夜空を美しく染め上げる、色鮮やかな光の花が。
パァンッ
音は光に遅れてやってくる。
夏祭りの締めくくりである花火が、夜空を自分達の色で染めていった。
その豪快で圧倒的な美しさに、僕は言葉を失った。
これだけ間近で花火を見たのは、生れて初めてだった。
そして僕は中田さんが何を待っていたのかを知った。一年前、何をしに屋上に上っていたのかも。何に恋していたのかも。全てを知った。こいつはかなわねえと思った。
校舎の屋上は、たぶん町で一番花火が綺麗に見られる場所なんだ。
そして興奮から思わず立ち上がってしまった次の瞬間――
僕の体を、
強い風が、
押した。
一秒で重力が消失する。
落下の瞬間。
僕はそれを見た。
夜空を背にした、中田さんを。
その絵に目も心も奪われ、走馬灯を見る暇すらありはしなかった。
★★★
仰向けになって見上げた空は、星の光に満ちていた。
僕は校舎の屋上に倒れている。逆の方向に落ちれば、地面までまっさかさまだったが、こっち側はタンクの分の高さしか落ちなかった。それでも二メートル近くあったので、打ちつけた背中は死ぬほど痛い。
けれど僕は、生きていた。
もう屋上には僕の他は誰の姿もない。
思い出すのは最後に見たあの光景だった。
花火と中田さんが重なった最高に綺麗な絵。
あの時、中田さんはからかうような笑顔で「夢ばっか見てんじゃないよ」と言っていた。
僕はその言葉を噛み締め、悲しみとか、喜びとか、切なさとか、感動とか、そういったものを全部まとめて噛み締めて、そしてメチャクチャに笑った。そしてメチャクチャに泣いた。笑いながら泣いて、泣きながら笑った。
声がかれるまで笑って。
涙がかれるまで泣いた。
笑い疲れ、泣き疲れて、そして最後に一度だけ、そこに中田さんがいるかのように呟いた。
これからも僕は適当に悩んで、適当に苦しんで、適当に怯えて、それでも適当に頑張っていくからさ。
だからアンタは心配すんな。
僕の言葉を、たぶん星空だけが、聞いていた。
中田さんは、大勢の人で賑わうお祭りを楽しそうに眺めている。
その笑顔が本当はここにはないものでも、僕は彼女の隣で喜びを感じていた。
中田さんはちょうど一年前、夏祭りの夜に学校の屋上から落ちて死んだ女子高生で、その時僕とは同じクラスだった。なぜ彼女が死んだのか、そもそも自殺だったのか事故だったのかすら分からないが、今年の夏に入ってから屋上に幽霊が出ると噂が立ち始め、好奇心から確かめに行き、幽霊になっていた彼女を見た時、僕はとにかく「すげー!」って思った。
だってそうだろう?
幽霊だぞ。幽霊。そんな非科学的で幻想的なものがマジでいるなんて普通思わない。それなのに彼女はいた。深夜の校舎の屋上にプカプカゆらゆら浮かんでいたのだ。その事実に僕は興奮した。どこまで行っても、たぶん死んでもずっと普通のままだろう僕は、中田さんという異世界に本気で感動した。だって幽霊は家庭の不和に苦しむことも、学校での問題に悩むことも、将来の不安に怯えること何一つなく、ただ自分の目的のためにだけそこにいることが出来る。そんな在り方に感動しないで、何に心を動かせというのだ。
だから僕は毎日のように深夜の学校へ侵入を繰り返した。
見つかっても逃げ切り、どんな対抗策を取られようが必死で中田さんに会いに行った。会って何をするわけでもなかったけど、僕は幽霊である中田さんと一緒にいるだけでひたすら嬉しかったのだ。
だからそんな彼女の笑顔が、無性に喜ばしく感じられていた。
「もう、祭りも終わりだね」
中田さんは静かに言う。
それは何かを懐かしんでいるような声だった。
どことなくいつもより深い彼女の横顔に、僕はなぜか不安になった。
「君、私のこと好きでしょ?」
見事な不意打ちに、取り繕おうにも、すぐには言葉が出てこなかった。
違うと否定しようとして、そんな自分をもっと深い自分が押し留めて、嬉しさや恥ずかさといったいろんな感情が混ざり合い、結局一つとして口から出ることはなく、沈黙だけが生産された。
それを肯定と受け取ったか、中田さんはおかしそうに笑う。
「分かるよ。だって雨の日も風の日もやってくるんだから」
そんなことを言う中田さんの笑顔は、事実すごく可愛いかった。
「でもごめんね。私、他に好きな人がいるから」
どう反応すればいいのか、分からなかった。
中田さんは笑顔のままに続ける。
「とにかく私は君の気持ちには答えてあげられない。もともと幽霊だしね。だから今日は最後の時間を付き合ってくれた、そのお礼」
「お礼?」
なんのことかと訊き返そうとする僕の口を、中田さんの指が制した。
唇に向けられた人差し指。
その指がまっすぐ天へと向けられる。
そして、そこから大きな大きな花が咲いた。
夜空を美しく染め上げる、色鮮やかな光の花が。
パァンッ
音は光に遅れてやってくる。
夏祭りの締めくくりである花火が、夜空を自分達の色で染めていった。
その豪快で圧倒的な美しさに、僕は言葉を失った。
これだけ間近で花火を見たのは、生れて初めてだった。
そして僕は中田さんが何を待っていたのかを知った。一年前、何をしに屋上に上っていたのかも。何に恋していたのかも。全てを知った。こいつはかなわねえと思った。
校舎の屋上は、たぶん町で一番花火が綺麗に見られる場所なんだ。
そして興奮から思わず立ち上がってしまった次の瞬間――
僕の体を、
強い風が、
押した。
一秒で重力が消失する。
落下の瞬間。
僕はそれを見た。
夜空を背にした、中田さんを。
その絵に目も心も奪われ、走馬灯を見る暇すらありはしなかった。
★★★
仰向けになって見上げた空は、星の光に満ちていた。
僕は校舎の屋上に倒れている。逆の方向に落ちれば、地面までまっさかさまだったが、こっち側はタンクの分の高さしか落ちなかった。それでも二メートル近くあったので、打ちつけた背中は死ぬほど痛い。
けれど僕は、生きていた。
もう屋上には僕の他は誰の姿もない。
思い出すのは最後に見たあの光景だった。
花火と中田さんが重なった最高に綺麗な絵。
あの時、中田さんはからかうような笑顔で「夢ばっか見てんじゃないよ」と言っていた。
僕はその言葉を噛み締め、悲しみとか、喜びとか、切なさとか、感動とか、そういったものを全部まとめて噛み締めて、そしてメチャクチャに笑った。そしてメチャクチャに泣いた。笑いながら泣いて、泣きながら笑った。
声がかれるまで笑って。
涙がかれるまで泣いた。
笑い疲れ、泣き疲れて、そして最後に一度だけ、そこに中田さんがいるかのように呟いた。
これからも僕は適当に悩んで、適当に苦しんで、適当に怯えて、それでも適当に頑張っていくからさ。
だからアンタは心配すんな。
僕の言葉を、たぶん星空だけが、聞いていた。
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お久しぶりです
どうもお久しぶりです。掌編でナギさんの名前を見つけたのですが、何やら管理人さんからメッセージが書かれていたので、感想はここに書きますねー。
なんとなく、辛く行きます。
まず最初に思ったのは、なんだか中途半端だなあ……ということです。小説は曖昧な部分も味があっていいのですが、今作はちょっと過ぎると思いました。
曖昧な部分その①
二人の関係。
二人の間に芽生えたものは何なのでしょう。友情でしょうか、愛情でしょうか、それとももっと冷めた何かなのでしょうか。私の読解力不足も相まって、わかりませんでした。できたら、もう少し二人のやり取りが見たかったです。こちらの想像に寄りかかりすぎだと思いました。
曖昧な部分その②
>一秒で重力が消失する。
ここらへんですね……曖昧というか、いまいち状況理解できませんでした。僕と中田さんの位置関係etc
限られた枚数で無駄な文章は入れられないのだとは思いますが、やはりクライマックスシーンが薄くなってしまうのは(もしかしたらそれは読者に想像させるというナギさんの狙いなのかもしれませんが)よくないと思います。
まあ、このくらいにしますねー。
ナギさんは実力のある方なので、辛く書いてみましたー。ではでは、これからも頑張ってくださいねー。応援していますー
なんとなく、辛く行きます。
まず最初に思ったのは、なんだか中途半端だなあ……ということです。小説は曖昧な部分も味があっていいのですが、今作はちょっと過ぎると思いました。
曖昧な部分その①
二人の関係。
二人の間に芽生えたものは何なのでしょう。友情でしょうか、愛情でしょうか、それとももっと冷めた何かなのでしょうか。私の読解力不足も相まって、わかりませんでした。できたら、もう少し二人のやり取りが見たかったです。こちらの想像に寄りかかりすぎだと思いました。
曖昧な部分その②
>一秒で重力が消失する。
ここらへんですね……曖昧というか、いまいち状況理解できませんでした。僕と中田さんの位置関係etc
限られた枚数で無駄な文章は入れられないのだとは思いますが、やはりクライマックスシーンが薄くなってしまうのは(もしかしたらそれは読者に想像させるというナギさんの狙いなのかもしれませんが)よくないと思います。
まあ、このくらいにしますねー。
ナギさんは実力のある方なので、辛く書いてみましたー。ではでは、これからも頑張ってくださいねー。応援していますー
すっげーおひさしぶりです
本当に管理人さんにお達しをくらってましたね。
うぅ、ここまでしでかしてしまうとは反省ものです。以後は気をつけねば
そしてご指摘の方も、すごく参考になりました。
特に二人の位置関係。これは自分でもあやしくおもっていたところなので、やっぱり言われたかって感じです。
二人の関係は、主人公が中田さんに方恋って感じです。中田さんの方は、まぁ友達くらいに見ていたかと思います。
辛い感想は望むところです。
カエルさんにはすごく感謝してますよっ。大好きだっ!!
うぅ、ここまでしでかしてしまうとは反省ものです。以後は気をつけねば
そしてご指摘の方も、すごく参考になりました。
特に二人の位置関係。これは自分でもあやしくおもっていたところなので、やっぱり言われたかって感じです。
二人の関係は、主人公が中田さんに方恋って感じです。中田さんの方は、まぁ友達くらいに見ていたかと思います。
辛い感想は望むところです。
カエルさんにはすごく感謝してますよっ。大好きだっ!!