作品をもっとよきものにするために、常に批評酷評アドバイスを求めております。作品の著作権は夢細工職人-ナギ×ナギにあります。
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
テーマは『HERO』
視点は正義の巨大ロボの、整備士。
彼はいつも思う。このロボは、何を考え、悪と戦うのだろうかと。
オチまで構成を考えたはいいが、語りを誰にさせるかすごく悩んだ作品です。ロボの一人称。オペレーターの魅神さん。はたまた正義のヒーローと考え、整備士に落ち着きました。客観的視点でかきたいなーと。
視点は正義の巨大ロボの、整備士。
彼はいつも思う。このロボは、何を考え、悪と戦うのだろうかと。
オチまで構成を考えたはいいが、語りを誰にさせるかすごく悩んだ作品です。ロボの一人称。オペレーターの魅神さん。はたまた正義のヒーローと考え、整備士に落ち着きました。客観的視点でかきたいなーと。
『手紙』
――拝啓、博士
――拝啓、博士
お元気ですか。巨大ロボは元気です。
早いもので、故郷を出てから三ヶ月が経ちました。
お仕事も、始めの頃は不慣れから周りにも迷惑をかけていましたが、最近はようやく慣れてきて、それなりにこなせるようになってきました。
職場の仲間もいい人ばかりです。先日も、初めて一人も踏まずに怪獣を倒すことができたときには、みんな自分のことのように喜んでくれました。
中にはうまくいってなかった同僚もいましたが、今では折り合いをつけ、彼らは彼ら、自分は自分と思い、仕事に専念するようにしています。
巨大ロボは元気にやっています。
巨大ロボは今日も世界の平和を守っています。
外は寒くなる一方のようなので、博士もお体にはお気をつけください。
敬具
追伸
研究ばっかりしてないで、そろそろいい人でも見つけてください。オペレーターにいい感じの三十路などいるので、よろしければ今度紹介を――――
(※)
とんでもなく大きなドックだった。中にある資材を片付ければ、悠々サッカーができるくらいの面積で、天井も高い。そのせいで、ここがとんでもない地下であることを、整備士は時々忘れそうになる。
整備士は浅黄色のツナギをきた若い男だった。仕事場のせいで肌は白いが、日々の労働のたまものでガッシリとした体つきをしていた。胸のプレートには、『第4整備班/土佐マサト』とある。
マサトは、ここにくるといつも『ガリバー旅行記』を思い出す。
小人の国に流れ着き、紐のような縄でがんじがらめにされるガリバーの絵。
寝かされたまま、いくつもの装置に接続され、パイプをつながれた巨大ロボの姿は、まさにガリバーそのものに思えるのである。そして、自分は無力な小人であることを思い知るのだ。
――おきあがるガリバーは戒めをふりはらいます
――小人達はあわてふためきました
そんなフレーズ。
確かにコイツが急に動き出したりしたら、ここにいる連中はとんでもなく慌てるだろう。そして整備班は、徹夜でチェックの仕事を押し付けられるのだ。
「どうしたよ土佐。今日の仕事は終わりだぜ」
かけられた声に振り向くと、そこには知った顔――3班の今井がいた。あごひげを整えた青年である今井と、マサトはいわゆる同期の桜だった。
「いや、いつみてもすごいな、と思ってたんだ」
「ああ? ああ、ロボのことか」
今井もマサトにつられてロボを見上げる。
あまりに近くにいるために、ここからでは顔の側面しか見えていない。ここではとても見慣れた光景である。
しばらくそのままでいると、今井が大きなため息をついた。そこからは「よくあきねえな」という気持ちがアリアリ伝わってくる。
さすがに痺れを切らしたのか、「確かにスゲーはスゲーけどよ」と前置きして、今井がいった。
「さすがに俺はもう慣れたぜ、こいつには。だってそうだろ。田舎から都会に出てきた奴だって、最初は興奮するだろうけどよ、すぐにコレはこういうもんなんだって納得するんだ。それと同じだろ。コイツも」
「それは――そうだけどな」
「まぁ、そうだな。コイツが豪快に怪獣なんかをぶっ飛ばしてくれたら、整備している身としちゃ気分いいがな。ああいうのは野球のジャーマネの気分なのかね」話しながら、今井はカラカラと笑う「ホラ、この前なんぞ初めて犠牲者が出なかったんだよな。上の方なんてかなり喜んでたって聞くぜ。俺もなんか完全試合みてーで悪くなかったけどさ。初めての出撃のときとか、憶えてるかよ」
もちろん憶えている。
入念に情報操作をしてきたために、外部にはあまり知られていないが、誤踏みで出た死傷者はとんでもない数にのぼったらしい。それが0名になったのだから、すごい進歩だといえる。たとえそれが人口密度0,5%の弩田舎村だったとしてもだ。
「で、土佐はどうなんだよ?」
「どう、とは?」
「何を考えてたんだって聞いてんのー」
いつのまにか話が戻っていたらしい。
マサトは一度目線を落とし、考える。自分は何を考えていたのかを。
巨大なロボが、ガリバーみたいだと思っていた。それは、つまり――――
「――何を、考えてるんだろう」
「あん?」
今井が怪訝な顔をしている。マサトの言い方が悪かったらしい。言い直すことにした。
「オレじゃなくて」手を伸ばし、ロボの横顔に手をつける。伝わる感触は硬く、冷たい「こいつが、何を考えてるんだろうって、思ってたんだ」
熱い血潮も、優しい心も感じられない、鉄の身体。
マサトには分からない。
コイツは喜んでいるのだろうか。
自分の進歩に。
世界の平和を守っていることに、誇りを感じているのだろうか。
「ぶち切れてんじゃねえの」
いったのは今井だった。
「絶対ぶち切れてんべ。あいつらによ。間違いねえって」歯を見せ、愉快そうに笑い「俺達もみんなムカついてるけどよ、一番ムカついてんのはこのロボだろ。やれるもんならぶっ殺したいとか思ってんじゃねーの」
「あー」
確かに。
マサトは自然と頷いていた。
あいつら――この巨大ロボを駆るはずだった、あの5人の戦隊ヒーローのことを。
けたたましいサイレンの音が鳴り出したのは、ちょうどマサトが「もう帰るか」といおうとしかけたときだった。赤いランプが辺りを照らし、格所員を所定の場所へ誘導する放送が流れ出していた。
この状況は――――
「クッソ! このタイミングかよ! 今から交代だってのについてねえ!」
今井が悪態をつく。その通りだった。
放送は続いてどこそこの地域に、怪獣が出現したことを告げている。つまり、それはマサトや今井にとっての残業通告だった。
続いてどこかから荒げる声が聞こえてくる。
聞き覚えのあるオペレーター達の声だった。「魅神さん。今日もいい声!」と今井は無駄に元気だが、オペレーションルームから聞こえてくる内容は、やはりいつものもの――「ブルーはどうしたのっ?!」「風邪だそうです!」「ブラックはっ?!」「親戚の法事でこられないといってます!」「じゃあグリーンは?!」「電話に出ません!」「ピンクはどうした――っ?!」「海外旅行中だそうです!」「リーダーはっ?! レッドはなにをしている?!」「『だが断る』でした! 無駄に男らしかったです!」「っまたか―――――――っ!!」そしていつもの絶叫を上げていた。整備班だって心は同じだ。みんな同じだ。
いつものことだが、あいつらは、正義のヒーローのくせに、今まで一度として悪の組織や怪獣と闘ったことがない。一般市民から選ばれた5人らしいが……どんな選考基準で選ばれたのかしらないが……あいつらは戦わない。サボるのである。
なぜなら彼らの名前はバックレンジャー。
サボり戦隊・バックレンジャーなのだから。
今日も巨大ロボは自動操縦で発進する。毎回だが! これしかしたことないのだが!
発進フェイズに移行しつつあるロボを見上げて、マサトは思う。
いったい、何を考えコイツは戦うのだろうかと。
しかしすぐにそんな考えも振り払い、自分の持ち場へと駆け出していた。
そうだ。
コイツはコイツだ。自分は自分の仕事に専念せねば。
――拝啓、博士
巨大ロボは元気にやっています。
巨大ロボは今日も世界の平和を守っています。
PR
この記事にコメントする
読みました。
…というわけで感想ですね。
最高です。もう、自傷行為を行いたくなるぐらい悔しいです――というわけにもいかないので、悪あがき程度の批評をばさせていただきます。
1.やはり人口密度のあたりですかね。密度の表示はもちろんのこと、人口が少なくて甚大な被害、っていうのは、結局どのくらいのものなのかピンと来ません。「この村にとっては」みたいな前置きが必要やも知れませんね。
2.レンジャーのくんだりは、やや意味不明ですね。“笑い”がいらないというわけではありません。確か、ライトノベル作法研究所だったと思いますが、話の流れ上必要な“笑い”と、いわゆるKYな“笑い”があるのでそこに注意せよ、というような話があった気がします。ちょっとレンジャーが謎だったので二番目に挙げました。
3.全体的に統一性が薄い。ないこともないのだけど、誰に感情移入すればよいのか、最初と最後の文面は何の意味があるのか、という点があまり解消されてない気がします。
ガリバー旅行記を入れてくるセンスや、文章のレベルは立ち直れないくらいすばらしいと思います。惜しいかなそういう細かい詰めの部分が甘いような気がします。
偉そうに言ってスマソ。ま、気にすんなや。
最高です。もう、自傷行為を行いたくなるぐらい悔しいです――というわけにもいかないので、悪あがき程度の批評をばさせていただきます。
1.やはり人口密度のあたりですかね。密度の表示はもちろんのこと、人口が少なくて甚大な被害、っていうのは、結局どのくらいのものなのかピンと来ません。「この村にとっては」みたいな前置きが必要やも知れませんね。
2.レンジャーのくんだりは、やや意味不明ですね。“笑い”がいらないというわけではありません。確か、ライトノベル作法研究所だったと思いますが、話の流れ上必要な“笑い”と、いわゆるKYな“笑い”があるのでそこに注意せよ、というような話があった気がします。ちょっとレンジャーが謎だったので二番目に挙げました。
3.全体的に統一性が薄い。ないこともないのだけど、誰に感情移入すればよいのか、最初と最後の文面は何の意味があるのか、という点があまり解消されてない気がします。
ガリバー旅行記を入れてくるセンスや、文章のレベルは立ち直れないくらいすばらしいと思います。惜しいかなそういう細かい詰めの部分が甘いような気がします。
偉そうに言ってスマソ。ま、気にすんなや。